【精神科の病気その2】うつ病・抑うつ状態・適応障害の違いを管理栄養士がわかりやすく解説

精神科の病気5食事のメンタルヘルス

怖い、近寄りがたい、別世界の話…。そんな印象を持つ人もまだ多いかもしれません。でも実際には、精神科で扱うのは、私たちの日常と地続きの“こころ”の問題なのです。

こんにちは。精神科病棟で働く管理栄養士のアオキコです。この記事では、「うつ病」「抑うつ状態」「適応障害」の違いについて、現場でのリアルな経験を交えながら、わかりやすく(ちょっとだけ辛口に)解説していきます。


精神科で診る主な病気

精神科にはさまざまな診断名がありますが、実はすべてに明確な診断基準があります。一般に思われているほど曖昧ではなく、精神科の診療は非常に論理的です。

代表的な病気には次のようなものがあります:

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病・双極性障害)
  • 不安障害・神経症性障害
  • ストレス関連障害・適応障害
  • 身体症状症・解離性障害
  • 摂食障害
  • 睡眠障害
  • 依存症
  • 発達障害
  • 人格障害
  • 認知症 など

この記事では、「気分障害」のうちうつ病・抑うつ状態・適応障害に絞ってお話しします。


「うつ」とは?──うつ病・抑うつ状態の違い

うつ病は“病気”、抑うつ状態は“症状”

「うつっぽい」「抑うつ気味」などの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。しかし医学的には、この2つは全く別の概念です。

まず押さえておきたいのは、うつ病は医師による診断名であるのに対し、抑うつ状態はその人の一時的な心の状態を示す言葉だということ。

◆ うつ病とは

うつ病は、以下のような症状が続き、日常生活に大きな支障をきたす状態です。

  • 何をしても楽しくない
  • 食事を準備できない・食べられない
  • 睡眠障害(不眠・過眠)
  • 身の回りの清潔が保てない
  • 金銭管理やコミュニケーションが困難になる
  • 危険察知能力の低下

ポイントは、「生活機能に支障をきたしているかどうか」。この状態が医師の診断で「うつ病」とされると、初めて“病気”として診断されます。

◆ 抑うつ状態とは

一方、抑うつ状態とは以下のような“状態”のことを指します:

  • 気分の落ち込み
  • やる気が出ない
  • 集中できない
  • 食欲の変化
  • 頭痛・腹痛などの身体症状

これらは一時的な反応であることも多く、医師の診断がついていなければ「病気」ではありません。


うつ病と抑うつ状態、適応障害の違いを表で比較

状態    原因の有無      原因除去による改善診断名   
うつ病   明確な原因がないことも多い改善しないことが多い✅ 病気(診断名)
抑うつ状態 一時的な心理的反応   改善することが多い❌ 状態(症状)
適応障害  明確なストレス要因あり 改善しやすい   ✅ 病気(診断名)

適応障害とは?

環境の変化や強いストレスによって、うまく適応できずに生活に支障が出ている状態です。

  • 抑うつ気分
  • 不安や焦り
  • 不眠
  • 身体症状(腹痛・頭痛など)

特徴は「ストレス要因から離れると元気になる」

たとえば、

  • 会社では沈んでいるのに、推し活では元気
  • 勤務中は不安だけど、帰宅すると平常心になる

このようなパターンは、適応障害の典型的な例です。


よくある誤解と現場の本音

現代社会は複雑で、昔のように「一つの仕事をずっと続ける」ことが美徳とされがちです。

でも、環境が合っていないだけかもしれない。

適応障害で苦しんでいる人が「仕事を辞める」という選択をなかなかできないのは、日本の社会的価値観が根強いからだと思います。

でも私は、こう思うんです。

「その場所が合わないだけ。自分に合った場所を探せばいい。」

仕事を変えたことで、見違えるように元気になった人を何人も見てきました。適材適所って、まさにこのこと。


補足:うつ病と間違えやすい身体の病気

実は、身体的な疾患でも「うつっぽい症状」が出ることがあります。うつ病と診断されても、実は以下が原因だった…というケースも。

  • 甲状腺機能低下症
  • 脳梗塞・脳腫瘍
  • パーキンソン病
  • がん・糖尿病
  • ステロイドやβ遮断薬などの副作用

さらに、妊娠・出産・更年期といったホルモンバランスの変化も影響します。

性格・遺伝も関係する

  • 完璧主義・几帳面・責任感が強い人は要注意
  • 家族にうつ病歴がある場合、発症リスクが高いという統計も

【まとめ】無理に適応しなくていい

  • 精神疾患の診断は、症状だけではなく医師の判断が重要
  • 「うつ病」「抑うつ状態」「適応障害」は似て非なるもの
  • 環境に無理やり適応する必要はない。あなたに合った場所を見つけよう

最後に

今つらいと感じているあなたへ。「病気かどうか」は医師が決めること。でも、「つらい」と感じている時点で、それは十分にケアが必要な状態です。

無理に自分を責めたり、環境に合わせようと頑張りすぎなくていい。

あなたに合う環境は、きっとどこかにあります。


この記事は精神科医の監修のもと執筆しています。


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