摂食障害というと、一般的に、拒食症、過食症と言われることが多いのではないでしょうか。
病名としては、拒食症は神経性やせ症、過食症は神経性過食症と言います。
さらに、過食性障害・回避制限性食物摂取症の4つの総称を摂食障害と言います。
これは、アメリカ精神医学会が作成している診断と分類の基準DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 第5版)を基準に行われています。
ここでは神経性過食症(bulimia nervosa)について解説していきます。
神経性過食症とは
食のコントロールが難しくなり、頻繁に過食をしてしまう病気です。DSM-IV-TRまでの日本語版では神経性大食症と呼ばれていました。過食に加え、嘔吐、下剤乱用など、体重を増やさないための行動が見られます。DSM-IV-TRまでは過食の頻度が「週2回以上3カ月以上」でしたが、DSM-5では「週1回以上」となり、より軽症も含むようになりました。
心理面では神経性やせ症と同じく、患者さん自身の自己評価は、体型・体重に大きく左右されます。
過食、嘔吐、下剤乱用は人前では出さず、体重減少がなかったり、正常体重だったりすると、周囲は気付かないこともあります。本人も症状を隠し、治療を受けないまま何年も経過することもあります。
自分でも病気とは思わず、援助を求めないことが少なくありません。
神経性過食症と、健康な人にも時には見られる「やけ食い」などの行動とはっきり区別できない場合もあり、病気かどうかを判断するのは難しい面もありますが、病気としての神経性過食症の特徴を良く知り、あてはまる部分が多い場合は、医療機関に相談が必要となってきます。
症状
神経性過食症の過食は、大量の食物を、詰め込むように一気に食べるのが特徴です。英語のbinge eatingを訳して「むちゃ食い」と言うこともあります。
意志の力で止められる、やめられないのは弱いからだと思われがちですが、自分では止められず、コントロールできないのがこの病気です。
吐く、下剤を使うなど、体重を増やさないための行動が見られます。神経性やせ症と同じく、自己評価が体重や体型に左右され
過食時間以外はものを食べない、という場合もあります。夜間の過食嘔吐による疲労、体重増による抑うつ感などから、登校・出勤できなくなることもある。過食経費がかさみ、生活に支障をきたすことも多い。
身体的症状
嘔吐が続いたら
- 唾液腺が腫れる
- 歯の表面が胃酸で溶ける
- カリウムが失われ、低カリウム血症になる。その結果不整脈が出ることも。
- 体重は正常なことが多い
体重は正常でも、血液検査や心電図検査が必要だと言えます。
精神的症状
- 完璧志向 体重が100g増えることも許せない
- 過食による疲労
- 体重が増えることでの抑うつ状態
- 自分では止められないコントロールの喪失
治療を受けない状態が続くと、身体症状が進んだり、うつや不安が強まったりすることもあります。
精神疾患併存症
神経性過食症には、抑うつ障害やパニック症、アルコールやその他の薬物の物質利用障害(乱用・依存)などさまざまな精神疾患が併存することがあります。
パーソナリティ障害群、特に境界性パーソナリティ障害の併存も多い。
過食は軽減しても、飲酒量が増えるという場合もあるので、症状の全体像をとらえて治療していくことが必要です。
経過と予後
神経性やせ症の経過の途中から過食が始まり神経性過食症の診断基準に当てはまる状態となる場合もありますし、軽いダイエットから始まる場合もあります。
ストレスの対処として過食が習慣化し嘔吐が加わることもあります。経過中に過食嘔吐が激しくなる場合もある。
一過性の経過もあるが、慢性化する場合もある。代償行動が重症の場合は慢性化しやすく、身体症状も強いため、心身両面からの治療が欠かせない。
当事者は、過食や嘔吐を病気だとは認識していない場合も多い。過食代償行動の悪循環が習慣化する前の受診の呼びかけが望まれる。
体重は低めになることもありますし正常体重のこともあります。
嘔吐が激しいと、過食嘔吐の悪循環が続き、長期化しやすいと言われています。
治療
治療は、過食嘔吐の軽減、心理面の改善、学校や職場での適応の援助などが目標となります。
過食嘔吐の症状軽減と心理的援助の両方が必要となります。
過食をなくす、というよりも、3食の食事を規則正しく食べることや、食べることのコントロールを取り戻すことを目指します。過食以外は食事をしない、1日1食しか食べないという場合もあり、毎日の生活リズム、食事のタイミングを規則正しくすることが重要となってきます。
症状が重症で生活が破綻しているような場合は、まず、症状コントロールを行ってから心理面の援助を行います。
心理療法では認知行動療法や対人関係療法が効果があるといわれています。
薬物療法は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)といった抗うつ剤が症状軽減することもありますが、長期的に効くかはわかっていません。薬物だけでの完治ができるとは考えられていません。
神経性過食症は、外来治療が基本となります。
生活リズムを改善できない場合、重症の身体合併症がある場合、抑うつ感が強く、安全な場所での薬物調整や閉鎖病棟対応が必要な場合などは、入院治療を行う場合もあります。
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